2012年12月30日日曜日

現地レポート⑧ ~ 第186番幼稚園~



20129月に新しく開園した幼稚園である。健常児クラスと特別支援クラスが同じ施設の中にある新しいタイプのモンゴル唯一の幼稚園である。現在、115名の子どもが通っており、そのうち、37人が障害を持っている子どもたちである。モンゴルにこのような幼稚園がないため、遠くへ最西の県バヤンウルギー県から引っ越して、通学している子どももいる。ウランバートル市郊外からも、保護者の送迎により通園している子どもも多い。
健常児クラスは年齢でクラス構成されており、他の国立幼稚園と同じように教師2名で子どもたちを指導している。現在、2クラスある。

☆健常児クラス(45歳クラス)

障害児クラスは、障害別にクラス構成されている。視覚障害児クラス1クラス、聴覚障害児クラス2クラス、言語障害児クラス2クラス、合計5クラスある。どのクラスも子どもの定員は9名に対し、教師は3人である。障害のある子どもを指導した経験のある教員が多く、特別支援教育を日本の大学で5年間学び、卒業したという先生も1人いる。各クラス、障害に合わせた工夫がされており、きめ細やかな指導が可能である。

☆言語障害児クラスにて
 
  
 ☆聴覚障害児クラス
 
  
☆視覚障害児クラス

園長は、
「このような幼稚園がモンゴルにはもっと必要である。ウランバートルの各地区に1園、各県に1園出来ることが理想である。ここを卒業した子どもたちが通える学校の数も増えることを望んでいる。」とのことである。
幼稚園の頃からケアのできる施設があることは、子どもの発達を考えても必要である。障害の有無に関わらず、全ての子どもたちが幼稚園・学校に通える日がくることを願っている。
新川真有美

2012年12月18日火曜日

現地レポート⑦ ~ 第116番学校(視覚障害)~




モンゴル唯一の聾学校であり、児童数81名在籍している。そのうち6065名が学生寮で生活をしている。全盲の子どもは少なく、弱視、盲の子どもが混ざってクラス編成がされている。教師は22名であり、そのうち、専門知識のある教員は3名(2名は小学部、1名は中学部勤務)おり、全盲教員もいる。年々、重複障害の子どもが増えており、リハビリも必要な子どももいる。
1年に1回しか入学が出来ず、1年に1クラス12人しか入学できないため、極僅かな子どもしか学習する機会がない。
20052009年には、外部の支援によりマレーシア、台湾、インドなどで専門知識を学ぶために12週間、最大1か月の研修に参加をしてきた先生もいる。研修に参加してきた教員から他の教員への情報共有、知識還元を学内でしている。
モンゴルで唯一の聾学校なので、地方からも子どもたちはやってくる。しかし、子どもたちの飛行機代、学生寮代など経済的な問題も多くあるが、国からの支援はない。白杖も個人購入のため、多くの子どもはもっていない。学校には支援された白杖があり、授業もされている。アメリカに留学していた女性が連れ帰ってきた盲導犬が1頭だけモンゴルにいる。現在、盲導犬訓練もモンゴルではされていない。
点字は、今も人の手作業で行っているため、点字の教科書が不足している。日本やアメリカなどでは、文字を点字にしてくれるコンピューターソフトがあるが、モンゴル語版はない。コンピューターが10台導入されており、視覚障害用のソフトも存在するが、モンゴル語版がない。そのため、現在、3人の教員がコンピューター指導のために必要な技術を学んでいる。
視覚障害のある子どもたちに必要な教材・教具は、海外からのものが多く、高価なため、入手が困難である。
音楽の先生が熱心で、子どもたちにピアノを教えているという。

学生寮を見学した。
男女で階を変えており、安全面には気をつかっている。今まで見てきた学生寮と違う点は、以下のとおりである。
24時間看護師が常駐し、子どもたちの変化に対応できるようになっている。
・洗濯や掃除などをする子どもたちの世話をする大人が、学生寮の先生以外にたくさんいる。
・ベットが1段である。
・床に何も置かれておらず、必要最小限の物しかない。
・学習室があり、点字の学習などがいつでも出来る環境である。
・点字表示が廊下、階段にされている。
・各部屋にコンピューターが1台ずつある。
・男子の部屋には、各部屋ピアノが1台ある。
・とにかく、広い!明るい!きれい!
 新川 真有美    


2012年12月6日木曜日

現地レポート⑥~第70番学校(知的障害)~



バヤンゴル地区、ソンギノハイルハン地区の知的障害のある19年生までの204人の子どもたちが通学している学校で3地区にある。最近は、重度の子どもが増えてきており、自閉症、ダウン症の子どもも増えてきている。社会主義時代には、スクールバスがあったが、現在はない。子どもたちの90%がゲル地区より通学しており、親の送迎が基本である。そのため、親の仕事等に支障が生じたり、貧困層家庭が多く通学に必要なバス代が支払えなかったりなど通学に問題があるため、保護者も教員もスクールバス運行を望んでいる。
教師29人のうち、特別支援教育専門教員は7名であるが、全員、定年が近い。作業療法士(OT)の資格も持った小学校教員が15年生の担任をしている。
現在、18クラスあり2部制をとっている。午前は8時~1145分、午後は12時~1630分まで授業がある。1クラス1015人の子どもに対し、担任1人で指導している。中等部の子どもたちはこの人数割合でも大きな問題がないが、小学部、特に12年生の子ども達15人を担任1人が担当するのでは、細やかな指導は困難である。中学部には車いすの子どもは在籍していないが、小学部には8名の子どもが車いすを使用しており、1クラスに最大で2名いる。親のサポートが少しあるものの、自閉症、ダウン症の子どもも各クラス1.2名いるので、担任1人では非常に厳しい状況である。
子どもたちは、国語・算数などの基礎科目と自立活動科目を学んでいる。自立活動科目は、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、理学療法士(PT)が担当し、個人の場合は120分、少人数グループの場合は1回40分授業を行っている。
現在校舎を増築中である。新校舎に19年生が学習できるようにし、旧校舎に高等部を新設、職業訓練科目(美容師、エステシャン、縫製・手工芸、製菓・製パン)を充実させる予定である。89年生の授業に「美容師」と言う科目を3年前から取り入れている。その子たちを高等部に進学させるとともに、美容師としての技術を向上させ、就職することが狙いである。
数年前に、IEP(個別の指導計画)、個のニーズにあった教育の必要性を助言された。しかし、個のニーズにあった教育というものが初めは全く理解が出来なかった。ようやく最近になり少し理解が出来るようになり、現在では重度の子どものIEP作成するまでになっている。中軽度の子どもたちについては、グループもしくはクラス単位で年間指導計画を導入しようとしている。
今年は6歳から13歳の1年生が入学した。やはり、親が学校に行かせることを拒否していたことによる入学の遅れとのことである。

新川真有美

2012年12月4日火曜日

経過報告⑤



                                                                                                      
みなさん、ご協力いただき、ありがとうございます。

 現在、翻訳していただいたものを監修する作業に入っていますが、予想以上に作業が難航しています。「特別支援教育」の分野では、モンゴルにない言葉や考え方が多く、日本語とモンゴル語とを照らし合わせながら、内容を確認する作業しております。日常の業務をしながら作業を進めているため、どうしても時間がかかっています。私たちが新しい分野を開拓していくためには、必要不可欠な作業であり、手を抜くことなく頑張っています。
 モンゴル語の監修をしていただくのに、モンゴル語専門の大学の教員にお願いしたところ、かなり安くしていただきました。しかし、監修費として1,000,000tgが必要となっています。監修では、誤字・脱字だけでなく、推敲もしていただいています。私自身、監修費が必要と言うことをこれまで知らなかったため、見積もりにあげていませんでした。大きな出費ですが、いいものを作る上では、必要不可欠な費用だと思っています。
監修費を精算すると、最低部数300部の印刷費用が足りなくなります。どうか、今一度、お近くの方にこの活動を紹介していただけないでしょうか?よろしくお願いいたします。

2012121日現在の報告です。

日本の口座に2団体、6個人から計5656,000円、モンゴルの口座に個人3名から70,000tg1団体、2名の方からは直接、50,000tg30,000円、400US$の支援いただきました(累計表示)。
  
新川真有美

2012年11月20日火曜日

現地レポート⑤ ~第63番学校(知的障害)~



ハンオール地区の知的障害のある子どもたちが通学している1975年に設立された19年生までの学校である。ウランバートル市で一番寒いと言われているハンオール地区は、ウランバートル市の端に位置する。1990年の民主化以降、仕事を求めてウランバートルに来た人や、子どもに障害があることがわかったため、ウランバートルの学校に通わすために引っ越してきた人が多い。ハンオール地区の大部分はゲル地区が占めている。現在、215人の知的障害のある子どもが在籍している。全員、ゲル地区で暮らしており、親は無職もしくは雇われ遊牧民である。
ハンオール地区は、1~14ホロー(ホローとは、日本だと〇丁目みたいなもの)まである。第63番学校の教員は、8月中旬より14ホローすべての担当を決め、ハンオール地区の社会部と協力をして障害のある子ども、学校に通っていない子どもを調査し、学校に行っていない子どもがいれば、親に学校に通わせるように説得をしたり、学校に通っている子どもたちの生活環境を見回ったりしている。モンゴルでは、障害のある子どもを自宅に隠す傾向があるので、1年生のクラスに12歳くらいの子どもがいることも珍しくない。その多くの子どもは、先生たちの調査活動により、学校に通うことが出来るようになった。
教員は27名、そのうち、特別支援教育を専門に学んだ先生は3名(ハンガリー1名、ロシア2名)である。その他の教員は教育大学の卒業生である。
子どもたちの障害は年々重度化しており、車いすの子ども、重複障害の子どもが増えている。ゲル地区にある学校なので、車いすでの通学は非常に難しい。学校では、ワールドビジョンより寄贈されたスクールバスを1台保有している。バスは、毎朝6時に学校を出発し、子どもたちを迎えに行っている。21人乗りのバスだが、スクールバスを必要としている子どもの数は現在60人以上である。複数回往復したり、教員が通勤の際、子どもたちを迎えに行ったりして、工夫している。このスクールバスは、教師が順番にガソリン代として、12tgずつ出すことにより運営されている。決して、先生たちの給与は自分たちが生活するのに十分な金額ではない。教員たちはいう。「子どもたちが学校に来ることが何よりも大切。通えなくなることの方が問題だ」と。
冬はあまりにも寒く、子どもたちは命がけで学校に通わなければならない。スクールバスが来る間、授業が始まるまでの間、寒さに凍えながら待たなければならない。毎日、学校に通える環境を整えるには、学生寮が必要である。158人の保護者も学生寮を希望しているが、運営面で問題があり、現在、設立される目処は立っていない。ウランバートルには、知的障害の子どものための学生寮付きの学校がない。学生寮のある学校があれば、地方の知的障害の子どもたちも学校に通うことが出来るようになる。
在籍児童数で国からの学校支援金が決まるため、特別支援学校の場合は少ししかなく、子どもたちの学習に必要な教材・教具を購入することが出来ない。第63番学校の場合は、保護者の協力を得ることが、非常に難しいため、先生たちが物を作り、販売し、資金を得て、ある程度集まると、代表の人がウランバートルよりも安く買える中国まで長期休みに買い出しに行っている。
子どもたちは、9時から授業が始まり、15年生は1245分まで、7年生は1330分まで、8,9年生は曜日によって異なるが、1415分あるいは1530分まである。この学校は1部制である。基礎科目と自立活動科目があり、自立活動科目は、個人差があるので、担任が個人かグループか授業形態を決め、実施をしている。
文部科学省の基準では、1クラス12人までの子どもに対して、担任1人となっているが、もっと少人数での指導をしたいと思っている。
肢体不自由児クラスも1クラス、5年前に設立された。現在9人在籍している。担任一人では大変なので、学校の判断で、補助教員1名を雇っている。他のクラスにも車いすの子どもはたくさん在籍している。
教科書は通常校と同じものを使用しているので、教員がそれぞれ工夫をして指導をしている。知的障害の子どもにあった教科書が欲しいと常々思っている。
1年ほど前に訪れた時は、床が抜けそうで、天井も落ちてきそうなほど古い建物の中で子どもたちは学習していた。この夏、アメリカとドイツの支援により、建物の大改修が行われた。9月に訪問した際は、子どもたちの教室はきれいに改修されたが、廊下には物が散々していた。これは、校長室、職員室など働く人々の部屋を、教室の後に改修をしたためである。「子どもの教室確保が優先」という校長先生。言葉も行動も「子どもが第一主義」である。
この学校には大きな運動場がある。体に障害のない子どもたちが思いっきり運動するには、十分の広さがある。子どもたちは、身体を動かすのが好きだ!休み時間になると、運動場に出てきて、元気に遊んでいた。
教室にある、子どもたちの机・椅子は教師の手作りである。姿勢保持の難しい子どもの机・椅子も先生たちの工夫によりつくられていた。
 新川真有美