2012年11月17日土曜日

現地レポート③~第29番学校(聴覚障害)~



1964年に設立されたモンゴルで最初の特別支援学校である。設立当初は、盲聾学校であったが、現在は聾学校(第116番学校)が分割され、モンゴル唯一の聾学校となっている。340人の難聴と聾の子どもが在籍している。そのうち200人が地方出身であり、2つの学生寮で生活をしている。教員は56人である。聴覚障害の専門知識を持っている教員は12人いるが、半数が近々定年を迎え、若い専門教員はいない。職員は120名であり、聴覚障害の人も多く働いている。
国の基準では1クラス8人までとなっているが、実際には1クラス12人が在籍している。そのような学習環境であっても、入学の出来ない子どもたちが多くいるのが現状であり、年々、重度の子どもが増えていると教員たちは感じている。
子どもたちの聴覚障害になった理由は、薬の副作用、遺伝、妊娠中のアルコールやタバコによると考えられるなど様々である。理由のわからない子どもも多く、聴覚障害になった時期によって、子どもたちの発語も様々である。
補聴器は高価で、個人での購入が難しいため、補聴器をつけている子どもはほとんどいない。2009年にFM補聴器(ロシア製)12台が使用できるクラスができたが、1クラスだけである。
手話と口話法、指文字を用いて、教科指導が行われている。指文字は1年生から指導し、手話は挨拶などを小学校から使用している。7年生から、手話による授業が始まる。アメリカ大使館から英語の手話を学び、英語の授業を進めている。モンゴルでは、手話が地方によって違うため、基準を作ろうとしている。
1990年までは、ソビエトのカリキュラムにより手話の使用が禁止されていた。そのため、聴覚障害者にとって、手話は母語同然なこともあり、コミュニケーションなどに支障があったという。
モンゴルでは、日本のように6歳になったら絶対に学校に通わせなければならないという法律はなく、保護者が学校に行かせる時期を決めることができる。全国で就学前検査も実施されていない。そのため、全国でどのくらいの児童が聴覚障害なのかは把握できていない。学校に通っていない聴覚障害の子どもも多くいる可能性がある。
1年生のクラスを見学させていただくと、全員6歳児クラスと、年齢が様々なクラスがあった。生活年齢が違えば、知識量も違うので、6歳児クラスとその他のクラスに編成されている。今年は、16歳の1年生の子どももいた。
絵を描くのが得意な子も多い。神奈川県とモンゴル国立教育大学との共催で行われる「アジアの子どもの絵画展」にも多く出展している。
職業訓練教科もあり、専門の教員が専門の部屋で指導している。必要な備品もそろっている。「美容師」「調理師」「木工」「縫製」などの技術を身につけても、就職が難しいのが現状である。
言語聴覚士(ST)は、口話法に力を入れており、120分ずつ個人指導している。
聴覚障害の子どもたちは、知的に遅れのない、身体に障害のない子どもが多い。そのため、通常学級で使用している教科書の学習内容は理解できることが多い。指文字や手話などの独自の教科の教科書が必要であり、作成に努めてきていたが、経済的理由により現在は止まっている。
聴覚検査機器は、日本の聾学校のように揃っており、専門の医師もいる。先生たちも聴覚障害教育に特化した教育を受けてきている先生たちの力により、学校全体のレベルも高い。

新川真有美

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